あたしの笑みを不快に思ったらしい美景が、顔をしかめつつバットを振る。

 ――直後、彼女の目が驚愕で見開かれた。



「う、嘘でしょー!?シュートなんて聞いてないよーっ!!」



 うん、だって言ってないもん。ストレートと全く同じフォームから繰り出せるようになるまでには随分な時間が必要だったけど、その甲斐があったってもんだ。

 泣きの一球も空振りし、三振ならぬ四振に終わってしまった美景は「やっぱあんたは凄いわ……」と微笑した。近付いて肩を叩いてきた彼女へ、同じように笑みを返す。



「……佐桜花、よく完成させたね!今年こそ優勝狙うよ!!みんな、去年の悔しさ忘れてないよね!?」



 さっちゃんこと間宮幸子監督の声に、2、3年生のあたし達が頷く。去年の試合をテレビで観ていたであろうベンチの1年生達は、堅い表情で俯いていた。

 スタミナが切れた先輩と交代したあたしのフォームが未完成だったばっかりに、逃してしまった優勝。あんな醜い姿はもう二度と晒さない。そう誓ったから、今のあたしがあるんだ。



「さーて、この辺でお開きにしましょ!パッと着替えて授業行ってらっしゃい!!」