「……安海(あずみ)先輩、好きです!私と付き合って下さい!!」

「……はぁ……」



 場所は定番の体育館裏。間の抜けた声を出したオレに、相手の女子は「えっ?」と言って心底驚いている。

 そんなに驚くことだろうか。告白してきたのなら“事前調査”は必須な筈。「知らなかった」なんて言われたら笑ってしまうが、とりあえず目の前の少女に尋ねてみる。



「キミ、オレのこと周りから何も聞いてない?」

「……はい?」



 あぁ、この反応は知らないんだな。きちんとした身なりからして、きっとこの少女は1年生だ。しかも大人しそうで、あまり噂話などを好んでしそうにない。似たようなタイプの友人達から勇気づけられ、ここに立ったという寸法だろう。



「……オレ、誰とも付き合わない主義だから。覚えといてくれるかな。じゃあ。」



 手短に告げて背を向けると、名前も分からない女子はさめざめと泣き始めた。あぁ、面倒臭い。早くここから離れよう。オレは足早に歩き出して、女子の泣き声に心の耳を塞いだ。

 別に、女を泣かせたくてあんなことを言っているんじゃない。単に、足枷になんて用がないだけなのだ。