「ていうか、最近の美隼君は、見てても全然ときめかない。だから比奈子、話しかけなくなったんだよ。」

「……え?」



 何を言い出すかと思ったら、全く予想もしていなかったことだった。俺は、大事な女の子を失って、ファンの一人も失おうとしているのだろうか。前まで俺のこと、応援してるって言ってくれてたじゃねぇかよ。何これ、辛い。そう思っていたら、比奈子ちゃんが小さく溜め息をついた。



「雑誌だけは、しっかりチェックして買ってるんだけどさ。折角好きな芸能人と同じ学校なのに、実物見てげんなりさせられる比奈子の気持ち、美隼君に分かる?」

「いや、それはその……すいません……」

「まぁ、いいんだけどさ。美隼君が元気ないのは、何が原因なのか、誰のせいなのかは分かってるしね。」



 うんうん、と頷きながら、ポンポンと肩を叩いてくる比奈子ちゃん。分かってるのかよ。あぁ、そっか……この子、俺が真奈瀬のこと好きなの知ってるんだもんな。それで、渋沢と一緒に居るのを見て悔しがってるのも、全部分かってんのか。理解者が居ると思ったからか、少し心が軽くなったような気がした。