「そうなんだ」

私はお風呂セットを
自分の荷物の上に投げると
ベッドに向かって歩き出した

「先生が好き…なんだろ」

「は?」

私はベッドに座ると
海堂の頭を見つめた

海堂の視線はまだ
数学の教科書だった

「加藤先生の前だけ
くしゃみが女の子らしかった」

え?
あんな遠くのいたのに
見てたの?

部活中に
私のくしゃみを聞いていたと?

「はあ……」

私は無意識にしていたくしゃみに
気づいてなかった

先生の前だけ
気をつけたつもりはないんだけど

「海堂は彼女いんの?」

「え?」

海堂が顔をあげると
私に振りかえった

「蓉子って友達がさ
海堂が気になっているらしい」

海堂は
ふぅっと息を吐くと
首を横に振った

「好きな人はいる」

「北海道に?」

「違う」

「ま、いいや。
いないなら、そう言っておく」

私はベッドに入ると
横になった

海堂は教科書をしまうと
部屋の電気を消して
ベッドに入ってきた