私は遠くなっていく加藤先生の背中を見つめた
広くて大きな背中だ

廉人さんみたいで

…廉人さんみたい?

私って
もしかして
加藤先生じゃなくて

廉人さんを好き?

お姉ちゃんの彼氏を?

まさか!
だって
廉人さんはお姉ちゃんを愛している

私に優しいのは
お姉ちゃんの妹だから

それだけだ

違う
たぶん
私はわかってる

気づきたくないだけだ

傷つきたくないから
振られることがわかっているから

加藤先生を
廉人さんに重ねて
勝手に想いを寄せているだけなんだ

「困ったな」

「何?
どうしたの?」

蓉子が私の顔を覗き込んできた

「何でもない」

私は笑顔で
蓉子に手を振った

私が
誰を想っているのか

気づいてしまった

廊下の窓から見える
広い校庭を眺めた