「お弁当、まだ食べてないよね?」

「おう」

そういや昼休みは飯食うのが目的な休憩だなと当たり前な事を思い出して、真鍋は頷いた。

「一緒に食べよ?イチね、たぶん次の授業まで戻らないと思うから」

殊勝な芽衣の態度に黙っていると、それとも誰かと食べる約束とかしてる?と力なく問われ、真鍋はなんだか自分が芽衣を苛めているような気分になる。

真鍋は少し考えて、芽衣の机の横に引っ掛けてある鞄を持った。

「ったく。壱弥に置いてかれて可哀想だから仕方なく、ほんと仕方なく、ご一緒してやるよ。感謝しろ」

すたすたと廊下へ向かって歩いていった真鍋に、芽衣が慌てて椅子から立ち上がって後を追いかけた。


窓の外は、早朝から続く土砂降りの大雨で、じっとりとした空気が目に見えるような悪天候。

どうせなら真っ黒な雨雲ごと、洗い流してくれたらいいのに。

雲がなければ、雨も降らない自然の摂理を否定するような馬鹿馬鹿しい思考に、真鍋は小さく息を零した。

追いついてきた芽衣が真鍋を見上げてにこりと笑う。

ああ、やっぱり顔だけは本当にやばいくらい可愛いなと頭の隅で思った。