「う、うん。たしかに、初めて芽衣みたとき、びっくりして何回もチラ見しちゃったもん。天使みたいにかわいかったなぁ、一年のときの芽衣…。三年の選択授業で一緒になるまでは中身こんなんだって思いもしなかったし」
「なんで遠い目するの。今だって十分かわいいじゃんか。つか、一年のときよりもーっとかわいくなってるから」
「だ、だって里中さん、頭いいよ」
「うっさい!お、女の子はちょっと馬鹿なほうが可愛いの。頭が可愛いっていうじゃん」
「それって褒め言葉じゃないし。里中さん、どう見積もっても軽くDカップはあるし。胸」
「うう、うるさい!ナナのいじわる!胸は仕方ないの!育たないものはどうしようもないの!だから胸はいいの。諦めてるの、最初から」
「ご、ごめん…そんな泣きそうな顔しなくても」
「泣いてないし!と、とととにかく!!とにかくね、わたしは倉澤くん狙ってるから。そういうわけだから、協力してね!ま、べつに協力なんかいらないんだけど。でもほら、わたしが倉澤くんにばっかり構ってたらヒメとかナナとか、イチも…さ、さびしい、よね?」
不安そうにチラ見され、壱弥と姫華がにやにやしながら頷いた。楽しんでるな、二人ともと思いながら七恵もこくり頷く。途端、芽衣は嬉しそうに笑って「だよね!」と声を弾ませた。
「あ。どうでもいいんだけど、芽衣のクラス次の授業体育だよ。うちと合同。体育館でバレー」
「うそ!やばー。購買にジャージ買いに行かなきゃ」
姫華の指摘に芽衣は弾かれたように学校指定の鞄を引っ張り、がさがさとかき回した後に財布を掴み出した。
七恵が「ジャージどうしたの」と訊くと、壱弥がどこか困ったような曖昧な表情で「しー」と芽衣に気付かれないように七恵に向かって唇の前に指を一本立てた。
