不意にかけられた言葉にぴたりと四人の動きが止まる。

呆れたような、けれどどこか温かい目で見守られていた事に気付いて、途端に何故か気恥ずかしくなったのだ。

がりがりと真鍋が自分の頭を掻き、七恵は筆箱を鞄にしまい、芽衣は壱弥に自分の分を含めた鞄二つを手渡し、壱弥はそれを受け取る。

さっきまで子供のようにはしゃいでいたのが余程恥ずかしいのかと、春日は喉の奥を鳴らして笑った。

「それでは四人とも、気をつけて帰って下さいね」

春日の真面目な言葉に芽衣が「はーい」と返し、手を振って廊下へ飛び出してく。

それに次いで壱弥が会釈し、「バイバイ春日先生」と七恵が続いて出て行った。

最後に残った真鍋だけが何か言いたげに春日を見遣る。

視線に気付いて春日が「何か?」と首を捻ると、真鍋は急に真剣な顔で春日に訊いた。

「春日先生って、一年の時倉澤の担任でしたよね?」

「ええ、そうですけど…」

「あいつ、すっげー嫌な奴ですね」

にっと悪戯に哂った真鍋に、春日は感慨深そうに頷いた。

「真鍋君とよく似ているんじゃないですか、彼は」

「それじゃあ同族嫌悪ですよ」

さよなら、先生。と言い、真鍋も三人を追っていく形で部屋を出て行った。

そして残った春日が、静かに笑んで呟いた。

「倉澤君は…ああ見えて、意外と素直なだけなんですけどねぇ」