「倉澤、彼女いるよ。芽衣のクラスの里中初音って、ほら、生徒会の副会長」
「ああ。知ってる知ってる。あの人すごい美人だよね?身長高くてモデルみたいにスタイルいいの!そっかー。倉澤くんて意外に面食いだね」
「なに言ってんの?」
芽衣の大きな瞳がじろりと七恵に向けられた。機嫌を損ねたのかと七恵が壱弥に視線を送ると、壱弥は大丈夫だよと左手を芽衣の後ろで振った。
ほっと七恵が安堵の息を漏らすと、今度は芽衣が姫華の顔を指さして七恵に迫った。
「その、だれだっけ?里中…さん?」
「うん」
「と、ヒメ。どっちが美人?」
「え、ど、どっちって……ひ、ヒメ?かな。でもヒメはなんか毒がありそうな美人で、里中さんは清純系だから、比べるのは難しい…ような」
「おい、ナナ。毒なんかねーぞ、私」
「た、例えだよ!例え!」
「それはそれでむかつく」
「ヒメうるさい。今はわたしがナナに聞いてるの!」
「はいはい」
ヒラヒラと手を振って姫華がどうにでもしろと諦めたように目を閉じた。
「いーい、ナナ。ヒメより不細工な人にわたしが負けるわけないでしょ。顔でわたしに勝てるような子なんかこの学校にいないの。入学した時から今までずっと」
気迫に押されて七恵が心持ち仰け反る。
