告白。という単語に七恵が声をあげ、姫華が目を丸くして芽衣を見詰め、壱弥が眉根を寄せて「だれに?」と訊いた。
芽衣は壱弥を押し退けていた手を弛め、愉快気に相手の特徴を挙げ始める。
「だれって、えーっと、名前なんだっけ。ほらあの、頭いい人ー。姫華のクラスのー。…眼鏡の、インテリっぽい」
云々唸りながらなんとか伝えようと身振り手振りで話す芽衣に、姫華があっけなく名前を言った。
「ああ、倉澤?」
「それそれ」
「誰それ?」
本気で知りませんという表情で壱弥が姫華を見遣る。すると七恵が「えー?知らないの?」と意外そうに身を乗り出してきた。
「有名じゃん。あの、ほらー、去年の全国模試で八位だっけ、七位だっけ?」
「五位でしょ」
姫華に訂正され、「あれ?」と七恵は照れたように笑う。片方だけ出来る七恵のえくぼがなんだかまぬけで可愛いなと、壱弥は難しく固まっていた表情を弛緩させた。
「ふーん、そんな奴いんのか。知らなかった」
「あははー。イチってほんと女にしか興味ないよねー」
「俺が男にすんげー興味あったら問題っしょ、芽衣ちゃん」
「うっわ。ちょー気持ち悪ーさむーなえるー」
「こら。女の子が萎えるとかいわないの」
べちんと額を壱弥の掌で軽く叩かれ、けたけた笑っていた芽衣が大人しくなる。むーと唸りながら額を押さえる仕草が子供くさくて妙に似合っていた。
しかし和んだのも束の間、姫華が「でもさ」と言い難そうに切り出した。
