* * *
朝。アナログ時計の短い針が真下からやや左、長い方の針がちょうど真上を指した時間。
黒い遮光カーテンの隙間から漏れ出る朝日が眩しくて、芽衣はもそもそと布団に潜った。
「ん…」
隣から掠れた唸りが聞こえ、温かいものが芽衣を包んだ。
「……」
なに。と、目を開ける。
まどろむ芽衣の視界に、見慣れた寝顔がアップで映った。
「……」
頭が上手く機能しない。考えるのが億劫だ。
しかし、それでも芽衣の手はペチペチと壱弥の頬を軽く叩いてくれた。
「…………」
開ききらない壱弥の目が、芽衣を捉えてまた閉じる。そして閉じた目の変わりに、今度は唇が開いた。
「何時?」
「……七時、くらい?」
「…時計みて」
「しちじ」
結局見ないまま芽衣が七時と繰り返すと、仕方ないなと壱弥が体を起こした。
「あ、ほんとに七時ジャスト」
時計の針の位置を確認してそう告げると、寝汚い芽衣は壱弥の腹にうつ伏せの顔を埋めて「もうちょっと寝る」と言った。
「……それ、本気で言ってんの?」
「んー…」
「髪の毛、すっげ寝癖なんですけど?」
「……」
壱弥の寝癖発言に、芽衣は腹を枕にしたまま眉を顰める。
けれど眠気に勝てないらしく、動く気配は無かった。もう一押し。
何が効果的か数秒考え、壱弥が再び口を開けた。
