「確かに芽衣ってありえないくらい可愛いよねー。中身馬鹿だけど。つか、不公平って言うわりにはヒメもモテてるじゃん」

「マニアックなM男にばっかだけどねー」

「芽衣!なぐっぞ、テメー」

読んでいた雑誌を体を乗り出して奪った姫華に、わざとらしく芽衣がきゃーと悲鳴を上げて壱弥にしがみついた。

「イチ、ヒメがこわいー」

「ま、まあまあ姫華ちゃん、落ち着いて」

「にやついてんじゃねーぞ、イチ」

「あ、わかる?だって芽衣の胸がもろ腕にあたってんだよね、実は」

にやにやだらしなく顔を緩ませている壱弥に「すけべー」と芽衣がふざけて笑う。姫華は「あたる程ねーだろ、芽衣の胸なんて」と雑誌を壱弥の足にぶつけた。

「ヒメひどーい!Bカップはありますぅー」

「そうそう!芽衣は華奢なスレンダー体形がウリなの」

「なんでお前がフォローしてんだよ」

「ヒメ落ち着きなって。ほら、あたしの作った春巻きひとつあげるから」

「え、まじで!?やった」

七恵が食べていたお弁当から二つあるうちの春巻きを一つ姫華の弁当箱に入れてあげると、掌を返したように姫華は大人しく腰を下ろした。「えー。いーなー」と芽衣が七恵を見る。

「じゃあ芽衣のプチトマトと交換する?」

「わーい!ナナだいすきー!ね、イチ。ひとくちあげよっか?ナナの春巻きってまじ美味しいよ!お店開けるレベルだよ、ナナの春巻きは」

嬉しそうに熱弁しながら春巻きをフォークで七恵の弁当箱から掠め取った芽衣は上機嫌で壱弥に寄り掛かり直した。はい。と口元に差し出された春巻きを一口分歯で噛み切って咀嚼する。思わず「うま」と無防備な声が壱弥からもれた。