あれから一年も経っていない。けれど。と、初音は閉じていた瞳を開けた。

けれど、何故かもう何年も付き合ってきたかのように感じるのだ。それは多分、お互いがお互いに何も隠すことなく対等に付き合ってきたからだろう。
初めから全て晒していた初音に、絢人は何も繕わなかった。例えそれが利用するためだったとしても、腹は立たない。

助けてもらったのだ。
どうしようもない自分を助けてもらった。

女子の間で嫌われないように素の自分を隠して笑う自分を絢人は見抜いているから、絢人の前でだけ初音は自由だ。何にも囚われない。

その絢人が、華原芽衣を「可愛い」と言う。
あの人みたいに、「可愛い」と。

嫌だ。いやだ。
絢人までとられたら、私には何も残らない。いやだ。そんなのは許さない。

足元から崩れていきそうな恐怖を気丈に踏みつけて、初音は背筋を伸ばした。