小悪魔は愛を食べる



* * *





「おー、やってるやってる」

手を額に翳して僅かな日陰をつくり、太陽光が乱反射して眩しいグラウンドを目を細めて眺める。そんな姫華の後ろに隠れるようにしてついてきた芽衣が「もうやだ!」と声を荒げた。

「あっつぅーい!日傘とかないのー?」

「ないよ。ほら、ジャージの上着被りな」

「うう…よけい暑いよぅ」

頭からジャージの上着を被せられ、むわっとした暑さが芽衣を包む。だが、直射日光を避けられただけでもましかと思い直し、グラウンドの校舎側にある半円のすり鉢状になった応援スタンドのベンチに、不機嫌丸出しで芽衣は腰掛けた。そのすぐ隣に姫華も座る。

「イチ、いた?」

被ったジャージの端をちょっとだけ上げ、グラウンドを右往左往走る男子を見ている芽衣に、姫華が「向かって右側のゴールのまん前にいるDFの奴じゃない?わかんないけど」と適当に答えた。

「あーうん、そんな感じするぅ…」

暑さでダレてしまっている芽衣はぐったりと姫華に寄りかかった。

「ヒメー…人は暑さで死ねるとおもう」

「うん。実際死ぬよ。熱中症とか」

「わたし、死ぬかも」

「大丈夫。まだ気温27度だし。日差し強いけど」

「死ぬよ!ぜったい死ぬぅ…。あぅ…アイス食べたい」