「あっ笑った!ひど!こっちは真剣に頼んでるってのに、ひどいじゃん!!」
「うん。俺ひどいよ。今頃気付いたの?鈍いね」
「や、知ってたけどね!バリバリ知ってたけどさ!!」
珍しく肩を震わせて笑っている絢人を横目で見上げながら、笑い過ぎだよ。と芽衣がこぼす。
そうして自分の顔から剥がした絢人の手をにぎにぎと握り、時折指先を摘んだりしながら、やがて言い難そうに芽衣の口が動いた。
「実はね、真鍋くんがね…、今度のテストで赤点とったらもう口きかないって意地悪言ってきてね、で、なんか…むかついたから大丈夫だもんて言っちゃって、でもっでもね、ぜんぜん大丈夫じゃないの!ぜんぜんわかんないの!このままじゃ赤なの!……口、きいてもらえなくなっちゃうよ。そんなのヤなの。ねぇ、勉強おしえてよ。倉澤くん、頭いいじゃん。お願い」
「べつに真鍋と話せなくなっても困らないんじゃない?華原には瀬川がいるんだし」
「だ、だめ!困る」
「なんで?」
「だ…だってわたし、……友達すくないもん」
絢人が目を瞬かせた。友達が少ない。それはそんなに困る問題なのだろうか。
考えてみると、絢人自身友達といって思い当る人物は誰一人いないが、今までに困ったことは特になく、その結果から、いや、困らないだろう。という答えが導き出された。
「友達いなくても、死なないよ」
淡白な声音だった。意識したわけではないが、ひどく平坦な声になったなと感じていると、芽衣が首を捻った。
