女という生き物はみんなこうなのかと問うた真鍋に、芽衣は普通と違うから。と曖昧な苦笑を浮かべた姫華を思い出し、真鍋は改めて芽衣をみた。
「華原さ、そんな怪我してんのに訴えねぇの?」
「え?なに?真鍋くん訴えられたいの?ほっぺ抓られましたって?えぇー?ちょっとぉ、ここ日本だよ。アメリカじゃないよ。そんなんじゃ民事にもなんないよ。訴えようとしてもまず先に弁護士が呆れるね、たぶん」
「俺じゃねーよ。腹、その腹の話」
「ああ。こっちか」
芽衣の手が自分の腹を擦る。
「うーん、なんていうか。あのね、訴えるとか、そういう問題じゃないんだよね。これは」
細くて小さい女の子の手が丁寧に腹を撫でる。まるで妊婦が胎内の子供を愛しむさまに似てみえ、真鍋の視線が泳いだ。しかしそれに構わず芽衣が言葉を紡ぐのを、壱弥が見守った。
「えっとね、これは…わたしが弱い証拠なの」
「あ?」
弱い?どこが?と本気で訝しむ真鍋の視線に、緩やかに芽衣が睫を伏せる。
「人はね、弱いから、傷つけられるの。傷つける人が一方的に悪いんじゃなくてね、傷つけられるわたしも、弱いから駄目なの。自分の今までに、無責任じゃ駄目なの」
「自分の今までに無責任てなに?」
「あー。うーん、うまく言えないけど、好き勝手に生きてる、自分にっていうか…傷つけたり傷つけられたりって言うか、うん。そういうの。生き物ってさ、結局命の上に生きてるじゃん?」
「…?」
