「千尋」
急に後ろから口をふさがれる。
中年の男の声…この声には聞き覚えがある。
その声を聞いてあたしの体は一瞬にして凍えずいた。
すると後ろからドンッという鈍い音が聞こえ、
男は真横に倒れた。
「浅見さん、大丈夫ですか!?」
目の前に居たのは南葉くんだった。
南葉くんが助けてくれたみたい。
「うん、大丈夫…」
「あー!足、血が出てる!」
南葉くんの目の先にはすりむいて血がにじんでいるあたしの右膝だ。
さっき男の体重に耐えられなくて膝を地面についた時に出来たんだろう。
「あ~、絆創膏持ってないんだったぁ。」
南葉くんは鞄の中をがさごそあさる。
「いいよ。擦り傷だし。」
「ダメだよ、モデルさんなんだから。…はい、ハンカチ。」
南葉くんは青色のハンカチをわたした。
「ありがとう。南葉く…」
お礼を言って顔を上げた瞬間、
南葉くんの背後に男が立っているのが見えた。
男は南葉くんを壁に突き飛ばし逃走した。
「南葉くん…!?」
南葉くんは地面に倒れ、頭から血を流す。
「南葉くん…!」
なんで…なんで南葉くんが…。
あの人が殺したいのはあたしじゃないの!?
人の騒然とした声が聞こえる。
気付いたら周りに人が集まっていた。
「ねぇ…もしかして…浅見千尋じゃない?」
誰かが呟いた。



