「さて、そろそろ帰ろうかな。明日も仕事だし。
すごく美味しかったわ」
母さんのその一言で、俺はやっとか、と安易のため息を吐いた。
やっぱり俺にこの空気は、気まずすぎる。
「あ、そうね。ごめんなさい忙しいのに来て頂いちゃって。ほら美菜、家まで送っていってあげて」
「は?」
突然のおばさんのその言葉に、美菜は驚いたように声を上げた。
勿論昔から頭の上がらないおばさんに、美菜が逆らえるはずもなく、送ってもらうことに。
…別に、送られる距離でもないと思うんだけど。
川瀬家を出て、俺はすぐにコンビニに行く、と告げた。
やっと抜け出せたと思えたのに、これじゃあさっきと全く変わらない。
「あらそう……あ、美菜ちゃんも行ってきたら?」
「え?」
「久し振りに近所でも散歩してみたらどう?」
…何を言い出すんだこの人。
俺の気持ちを知ってて言っているに違いないんだろうけど、ここまですることはないだろう。
「あ…でも…」
美菜は戸惑っているようで、俺の様子を伺っていた。
どうやら、俺のことを気にしているようだった。
