「夏生!」
菜瑠が呼ぶのも無視して…
だってもう菜瑠にあわせる顔がねえよ。
「夏生っ!!」
さっきより声が近くなったと思ったら不意に後ろから抱きしめられていた。
同時にふわっと菜瑠の匂い。
一瞬わけがわからなくなる俺。
「何で怒ってるの?あたしなんかしちゃった…?」
声が震えてる…
泣いてるのか?
「無視しないで…。」
今にも消えそうな声で…
「菜瑠…ごめんな」
振り返って菜瑠を抱きしめ返す。
「夏生…」
「ごめん。俺まじ情けねー…。」
ただの嫉妬で菜瑠を傷つけて泣かせて、本当最悪だ。
だけどそれくらい俺の気持ちは大きくなっていたんだ。
「ううん。ちょっとびっくりしちゃっただけ。ごめんね、泣いたりして。」
俺の胸から顔を離してフフフと笑う菜瑠にまた胸が痛む。

