ツンツン事情







「菜瑠っ!」



「へっ?夏生?えっちょ…」




無意識に菜瑠の腕をつかんで俺は歩き出していた。



「夏生!どうしたの…?」


菜瑠が話しかけてくるのも気付かなくて俺はただただ歩いてた。



とにかくあの男から菜瑠を引き離したかった。




「ねえ…夏生っ!腕、痛いよ…?」



弱弱しい菜瑠の声で俺はハッとした。



「菜瑠っ!ゴメン…。」


パッと手を離すと腕をさすりながら涙目で見上げてきた菜瑠。





ズキン…







ああ…


最悪だ…



俺何やってんだよ。



「夏生…どうしたの?」



「菜瑠…。」



菜瑠に触れようとすると、



「っ!」



菜瑠の肩がびくっと揺れた。


その仕草を見て俺は手をひっこめた。




「…っごめん。」



それだけ言って俺は来た道を戻った。