「ね、柏木、歌ってよ」


「何の歌?」


「え~……っとねぇ……なんか元気でるヤツ。あたしを肯定してくれるような」


「奇遇だね。僕も今歌おうと思ったんだ」


「何で?」


「三田さん、元気なさ気だから」



夕日に頬をオレンジに染めて優しく口を開く。


そこから漏れる声があたしを温かく包む。




あたしを理解してくれる大人が一人もいなくても。



柏木だけは味方だと思うんだ。



柏木はあたしを理解してくれてるわけじゃないけど。


たぶん何も知らないけど。



側で歌い続けてくれる。


そんな気がする。