「だから……三田さんがそう言ってくれたとき……一本でやれるほど本気じゃないくせに、親や先生から否定されればやりたくなる……僕にとって音楽は何かって考えたんだ」
「で?答え出た?」
「出たから進路の答えも出た。僕は音楽を逃げ道としてしか考えてなかったんだ」
「逃げ道……?」
夕日が陰りはじめ、音楽室は薄暗くなってきた。
電気をつけていないから柏木の顔が暗く見える。
それでも相変わらず、目だけはキラキラしてる……。
「そ、逃げ道。僕には音楽があるから大学行かなくていいでしょ?って言って、結局音楽からも逃げてた」
「プロになる気はなかったってこと?」
「そうだし、ストリートをずっとやっていくなんて考えてもなかった」
「……なんだ。あたしゃガッカリだよ」
柏木は夢に向かって突っ走ってるヤツかと思ったのに。
その背中ずっと見てたいって思ってたのに。

