ずっと根源のわからなかった感情。ずっと自分を悩まし苦しめていた感情。でもなぜか世界を明るく照らしてくれる。光と影が混ざり合う空のようだ。マキオは生まれて初めてそれを“恋”だと認識した。恋――それ自体の言葉も意味も知っている。液晶越しの仮想世界で繰り広げられる他人の恋愛フィクション。しかし、いざ現実のこととなると……。その先のシナリオは自分の筆次第。どんな恋愛小説家にも描けないオリジナルラブストーリー。マキオはその難しさを痛いほど感じていた。
「リュウは……好きな人とかいるの?」
 こうなると他人の恋愛も気になるもの。マキオはリュウの真意を確かめたかった。「リュウもリンのことを好きなのでは?」その疑念を払拭したかった。
「俺は……いねぇよ」
 タイムラグが逆に不安にさせた。「やっぱり……」そう思ったことも否めない。この問いに対して否定されたことでこれ以上言及することもできない。半信半疑。マキオの心境は複雑だった。