マキオは答えられなかった。答えたくても答えられなかった。それは他人が真情を吐露する場面に出くわしたことがないからだと思った。なぜリュウがこんなに大事なことを自分に打ち明けたのかも理解できなかった。だけど、そこには確かに〝自分の存在〟と〝認識の証明〟を感じた。だから、自分に対して私的な告白をしてくれたこの男に、この男が抱える葛藤と苦悩を拭える言葉を返してあげたかった。多くの知識と少ない経験でその頭脳をフル稼働させて考えた。でも、わからなかった。答えが導き出せない。もう、どうしていいのかもわからない。口を開くことも表情を変えることもできない自身とは逆に、思考回路のギアは空回りしたまま動き続けた。立ち止まるマキオの脳裏に浮かんだ素朴な疑問――こんな時、友達だったらなんて言うんだろう? ――きっと、長年の友達でも容易に答えられる問題じゃないだろう。マキオはそれを難問と位置づけて焦燥に陥り、自己嫌悪に苛まれ、そして恥じた。他人の事情を疎ましく思った自分自身を恥じた。立ち止まるマキオが辿り着いた素直な解答――
「ごめん……。わからない……」
 偽らなかった。