プライダル・リミット

 予期せぬマキオの叫びに男は驚いた。
「ど、どうしたんだよ? マキオ」
「その名前を呼ぶなぁぁぁ!!」
「……」
 マキオの心情を察した男は強い口調で口を開いた。
「お前がなんで自分の名前が嫌いなのかは知らねぇけどよぉ、お前の名前が“マキオ”であることに変わりねぇだろ? 自分の名前を呼んでもらえるってことは、自分の存在を認識されたってことの証明なんだよ! 少なくとも、俺はそう思ってお前の名前を呼んでんだ。聞こえてんのか? 御手洗真樹夫!!」
(自分の存在……? 認識の証明……?)
「聞こえたのかよ! 名前を呼ばれたら返事だろ?」
 マキオは低俗な人間だと決めつけ、その存在さえ認めようとしなかったこの男の言葉が心の中に響いたことに戸惑いながらも無言で走り去った。
「チョッ、チョ待てよ! ったく、ガリベン野郎は返事もできねぇのかよ……。てか今の俺、キムタクみてぇじゃねぇ? はは」