2008年11月25日(火)
 あれからマキオはあの男に出会わないようにとより人目を気にしながら大学構内から駅までの道を歩くようになった。
「日雇い派遣といってもその日だけとは限らないし、またいつ出くわすかもわからない。診療棟の完成までは気をつけなければ」
 わずかでも負の可能性があるならば、それが排除されるまでは細心の注意を払う。100%の確証が無ければ、信用はしない。ギャンブルには到底向かない性格だ。しかし、そんなわずかな可能性でも実現されることがある。奇跡と呼ぶべきか、悪夢と呼ぶべきか……。
「あっ、やっぱりそうだ。マキオーッ!」
 東大前駅に向かう途中で背後から自分の名前を呼ぶ声がした。
「!!」
 マキオは一瞬立ち止まったが、振り返らずともそれがあの男の声だとわかるとすぐに歩き出した。