「“厳正なる審査の結果、誠に残念ながら今回は審査の通過を見送らせていただきました”だとぉ？　っざけんなよ！　わかってねぇんだよ、俺の才能を。この感性を。俺のどこが他の奴等に劣るっていうんだよ。宛名の字は手書きで汚ねぇし。誠意が感じられんよ、誠意が。これ書くのだって仕事だろうが」
　下北沢の自宅アパートに帰ってきた男はポストに投函されていたオーディション結果の通知を見て愚痴をこぼすと、２階へと階段を昇り自室である２０３号室の鍵を開けた。
「ったく、とんだ誕生日プレゼントだぜ」
　部屋に入ると真っ先に冷蔵庫を開け、大好きなメロンソーダをグラスに注ぐと一気に飲み干した。
「今日はもう寝るべ」
　男はベッドに体を投げた。
「夢……か……」
　両手を頭の後ろにして仰向けになり、天井を見つめながら、先程の青年のことを思い出していた。
「チャンスはあと１年……」