ブログにはマキオと過ごした日々も綴られていた。初めて出会った日のこと、大学構内で再会した日のこと、カフェ・レノンでの出来事、バンド結成のいきさつ……。当時のリュウの心境と心情がわかる。端的で乱雑な文章ではあるが、そこには確かに友の“声”が、リュウの“言葉”があった。マキオはそれを一言一句、噛みしめるように脳裏に焼きつけた。自失ではなく、無心で……。そして涙が1つ、キーボードに落ちた――。
「覚えてるよ……あの日も、この日も……全部覚えてるよ……忘れるわけないじゃないか……!」
 マキオはわかっていた。今まで何度もその機会がありながら一度もちゃんと言えずにいたことを。ずっと伝えられなかった言葉。ずっと伝えたかった言葉。もう届かないかもしれないけど。でも――
「ありがとう」
 言葉にできなかった言葉。
「ありがとう、リュウ……ありがとう……ありがとう……」
 言っても言っても言い足りない。また涙が溢れ出した。どれだけ流せば、涙は涸れるんだろう?
 マキオは涙を手で拭って気を取り直すと再び画面をスクロールした。ブログは昨日の書き込みで途絶えていた。
「これは……!?」

 マキオに戦慄が走る――。