プライダル・リミット

 最初に口火を切ったのはリュウ。
「ライブが決まったんだ。ドアー・オブ・ザ・ドラゴンの初ライブ」
「ホント? いつ?」
「11月12日」
「11月12日……」
「合格発表の日だったよな?」
「知ってたの?」
「その日はマキオのセレブレーション・ライブだ」
「リュウ……。そうだね」
「しかも! 初ライブにして初ワンマン。それに、レコード会社のプロデューサーも観にくるんだぜ」
「スゴイじゃん! それでデビューなんてことも?」
「なきにしもあらず」
 誇らしげに話すリュウに抑え切れなくなったショウが口を挟む。
「まあ、ワンマンでやれるのも俺のおかげだけどな。モナート解散後もいまだにファンが絶えない俺の……」
 すかさずリュウが対抗する。
「ナカジが来るのは俺のおかげだろ!? あのデモテープを作ったのは俺だぜ? オマエの音なんか32分音符も入ってねぇんだよ! ナカジは俺の歌を聴きにくるんだ。オマエのギターじゃねぇんだよ!」
「アァン!? わかってねぇんだよテメェは! レコード会社はボランティアじゃねぇんだ! 売れねぇヤツなんか相手にしてくんねぇんだよ! そういった意味でも観客動員数は重要な……」
「音楽は売れる売れねぇじゃねぇ! イイかワルイか、それだけだ! オメェの資本主義なんざクソくらえなんだよ!」
「んだと!?」
「ヤんのか?」
「上等だ!」
「オモテ出ろや!」
『ブッ殺してやる!』