マキオは薄ら笑いを浮かべた。
「神の裁き……か。最高裁付近でソレらしい演出をしたみたいだけど、大方どっかの哲学書やら宗教書でも読んで脳ミソ侵蝕されたんだろ。“中途半端な知識は返って傷口を広げる”その傷口から感染したんだ。罪を犯せば罰がある。裁かれるのは自分の方だってわからないかな? 法治国家を理解してないよ。まあ、日本の刑法では4人殺せば死刑になるって言われてるし、あながち“お告げ”も間違いじゃないかもな。天に召されるっていう意味では。でも、僕はそんなことはしない。僕に抜かりはない。僕はいつだって完璧だ。裁きを下すのはキミじゃないよ。この僕なんだ」
 マキオはパソコンの電源を落として部屋を出た。階段を降り、玄関のドアノブに手を掛けた時、物音に気づいた母の声がした。
「いってらっしゃい」
「……」
 マキオは無言でドアを開けると、そのまま家を後にした。