「優紀子(ゆきこ)、起きたのね」
 
 病室のドアが開いてお母さんが入って来た。
 
 「うん。修ちゃんの夢見てた」
 「修ちゃん?ああ…お婆ちゃんとこの」
 「今年、花火見れないの?」
 「そうねぇ、お父さんに聞いてみないと」
 「そっか…」
 
 窓の外へと視線を移す。
 水溜りで楽しそうに遊ぶ子供たちに修ちゃんの姿が重なる。
 
 私が修ちゃんを最後に見たのは、修ちゃんが小学5年生の時。
 ってことは、今はもう高校生。
 
 私のことなんかきっと忘れちゃってるよね。
 もう大人のお兄さんになっちゃってるんだろうなぁ…。
 
 そんな時、ズキン…と胸に痛みが走る。
 
 私はてっきりこれがセンチメンタルな痛みなのかな、なんて思った。
 
 だけど、痛みと共にあっという間に目の前は真っ暗になって、それ以上意識が持たなかった。
 

 ただ、遠くで私の名前を叫ぶお母さんの声だけが頭に響いていた。