修太は優紀子の母の背中を見送ると、借りた桶で墓石に水をかけた。

 「ゆっこ、迎え来たてぇ」

 うなずく優紀子の姿が、修太には見えるような気がする。
 そんな優紀子の手を取って修太は歩き出す。

 「東京はあっちぃってぇ。ゆっこはこんげん空の下にいたんだいねぇ…」

 雲ひとつ無い空を見上げて修太はつぶやく。

 「なまり戻ってるよ」って笑う優紀子の笑う声が聞こえる気がする。
 
 「今年の花火は復興花火ゆうが~よ」

 修太は嬉しそうに話しながら、優紀子のお墓を後にする。
 
 蝉の声だけが、静かにそこに残っていた。

              おわり