「―…好きだよ、桐谷」



頬をつまんでいた手が、ふにゃりと離れて麻尋の指に絡みます。


まるで、恋人同士のような甘い仕草に、麻尋は息を忘れそうです。



「…うん、」



彼の言葉に、陶酔しそうです。


真っ赤な顔で必死に頷きました。




「オレと付き合ってくれる?」




ああ、王子、王子。


好きです、大好きです。



そんな私が告白を断れる訳ないでしょう。



爽やかなフレグランス。


いつかの夢で、微かに嗅いだ覚えがあるようでした。




“いつか自分から告白したい”



それを達成した自分は、今どんな顔をしているのでしょうか。




「桐谷、真っ赤だよ」


「…うるさい」



あの日の夢のようです。



ツンデレラに近付くのは、ずっと憧れた王子の唇。




(ごめんね、お姫様)



彼を幸せにするのは私。


このハッピーエンドはもう2度と離さないから。




「……すき」



唇が触れる直前、麻尋が小さく呟いた言葉を、譲は聞き逃しませんでした。





















あるところに、素直になれないお姫様がいました。


彼女は通称、ツンデレラ。



そんなツンデレラは、王子様が大好きでした。



けれど、ツンデレラは自分なんかが王子に好きになってもらえるはずがないと決めつけていたのです。



だから、彼女だけが知らないのでした。



王子がどれほど自分のことを好いてくれているのか。



まあ、知ったところでツンデレラにできることはないのですが。


王子としては、ツンデレラのこんなところが好きなのです。



そんな王子も、実は彼女に一目惚れだったというのはまた別の話。




―…こうして、王子とツンデレラは幸せな恋愛を始めるのでした。




めでたしめでたし。




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