きっと愛想をつかされたんだ。
確かに、自分にあんな顔をさせる奴なんかに会いたい訳がありません。
俯いた麻尋の視界で、ふわりと白いカーテンが風に揺れました。
そのカーテンの後ろ。
誰かの人影があるようです。
茶色の髪が風に揺られて、ほのかにいい香りがするようでした。
その人は、たいして筋肉もついていないのに、綺麗で細い体です。
麻尋には、後ろ姿だけで分かりました。
先ほど見送った背中が、また目の前にあるのです。
(………城市くん、だ)
高鳴る鼓動。
ひゅう、と喉が鳴りました。
譲がいるのは、いつも麻尋が座っていた特等席の場所。
イスに座る訳でもなく、ただ立って窓の外を見ているのです。
(大丈夫、大丈夫…)
それが麻尋の自分にかけられる唯一の魔法でした。
頭がくらくらします。
急激に喉が乾いたせいで、声がしっかり出るか心配でした。
―…ふられたらどうするの?
もうひとりの自分が言いました。
本当は怖いんでしょ?
やめればいいじゃん、と。
確かに、麻尋だって多少の恐怖は感じていました。
足だって今にも力が抜けて、座り込んでしまいそうです。
(…でも、それじゃダメなの)
彼に好きだと伝えたいのです。
ふられてもいいよ、
1からやり直すから。
今までのように、彼が自分を見つけてくれるのを待つだけじゃダメなのです。
「―…城市、くん!」
麻尋の視線と、譲の視線がぶつかりあいました。
ツンデレラは、愛しい王子の名を呼びます。
全ては、王子とハッピーエンドを迎えるために。
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