“幸せな夢ほど簡単に覚めてしまう”
譲の言葉は、麻尋が1番恐れていた言葉でした。
“いつか自分から告白しなおしたい”
いつかいつか、そう思っていた恋が終焉を迎えかけています。
好きなの、大好きなの、
そんな言葉たちは喉の奥でつっかかって中々でてきてくれません。
「ごめんな、桐谷」
…止めなきゃ、彼を行かせたくないよ。
「城市く……、」
「じゃあ、また学校で」
どうして、声が出ないの。
いつだって、素直じゃない口がいつも以上に私を無視する。
(待って、待って、行かないで…!)
徐々に遠くなっていく足音、彼の後ろ姿。
その背中に、麻尋はとっさに腕を伸ばしました。
しかし、麻尋の腕は彼を捕まえられることなく、宙を泳ぎます。
(…いやだ!)
麻尋は、そんな彼の後ろ姿が好きでした。
どんなことにも臆さない、その前向きな姿勢。
そんな背中がいつだって、麻尋にはとても眩しく見えて。
「どうして…」
これはきっと、今までの自分への罰なのです。
素直になれなくて、自己主張する勇気さえない。
彼が自分を見つけてくれること、理解してくれることに甘えていたから。
―…だから、肝心な時に声がでないんだ。
(……ごめんなさい)
傷付けてごめんなさい。
悲しそうな顔をさせちゃってごめんなさい。
でも、お願いだから。
(嫌いにならないで―…)
―…素直になれないツンデレラは、ずっと王子様が好きでした。
でも、声なんかかけられなくてただ見ているだけの日々を送っていたのです。
だけど、そんな生活でも、優しい王子に対する好きだという思いは募るばかり。
…そして、ツンデレラはやっと決めたことがありました。
いつか魔法が解けてしまう前に、王子に気持ちを告げることを。
.

