いつもはひとりで歩く道。
でも、今日はふたりで歩いています。
それがなんだかおかしくて、麻尋は変にくすぐったく感じていました。
まさか譲と歩くことができるなんて、恋人同士みたいだ、
こんなに幸せでいいのかな。
こんなにいいことばかり続いてしまうと、次は悪いことが起きてしまうのではないかと少し怖くなったりもしました。
「桐谷の家ってあっち?」
「……そうだけど?」
「へぇー」
(…普通に喋ってるよ…)
それがなんでもないことのはずなのに、麻尋はこんなことが嬉しくてたまらないのです。
一昨日までは、ただ見ていることしかできなかった人。
憧れのまま終わるんだと思っていた人です。
そんな人が、今まさに自分の隣を自分と同じ速度に合わせて歩いてくれている。
(夢じゃなかった……)
頬っぺたをつねってまで確かめた現実です。
麻尋の心臓はいつまで経ってもドキドキとうるさいままでした。
「譲ーっ♪……あれ?」
この瞬間までは。
麻尋にとって幸せな夢が解けた時でした。
だって麻尋はツンデレラ。
幸せなお姫様にはなれないのです。
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