この日から、麻尋は譲の夢を見るようになりました。
時には、譲と素直に話している夢だったり、自分に笑いかけてくれるような幸せな夢。
また時には、譲に彼女ができてしまうなどという悪夢でした。
彼は夢の中でも優しくて、自分もいつだって笑っています。
でも、どうしてでしょう。
幸せな夢ほど、あっけなく簡単に目が覚めてしまい、目を瞑りたくなるくらいの嫌な夢ほど中々覚めてはくれないのです。
それはきっと、自分の日頃の行いが悪いからだ、
麻尋はそう決めつけていました。
“―…桐谷”
でも、それでも幸せでした。
夢の中でも、名前をよんでもらえて。
夢の中でも、自分を見つけてもらえて。
大体、自分の願望だとはいえ、私なんかの夢に出てきてもらえるだけで、自分にはとてもありがたいことなのだ。
これ以上、欲張っちゃだめ。
もっともっと欲が出る。
彼の彼女でいたいなら、足手まといになってめんどくさがられるような行動は避けなきゃ。
麻尋は譲の夢を見るたび、幸せに浸ると同時に心にこう固く誓うのでした。
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