多分初めて話したのは、同じクラスになって1週間くらい経った頃でした。
“えーと……桐谷、さん?”
その時、ものすごくびっくりしたのを、麻尋は今でも覚えています。
だって、自分に話しかけてきたのが、男女問わず人気で且つ、自分がひそかに憧れていた城市譲だったからです。
かちこちになりながら、自分が緊張しているのがばれないように麻尋は必死になって、平静を装っていたのです。
“プリントの提出、係だったっしょ?これって普通に教卓の上でいいのー?ってみんなが”
“………適当でいーよ”
目の前でひらひらと、提出期限が今日で麻尋が集めないといけないプリントが揺れます。
(…多分、城市くんは押しつけられたんだろうな、)
自分がもうこの時点でクラスに溶け込めていないことは、クラスメイトだけでなく、麻尋本人も分かっていました。
もともと、団体行動が苦手な麻尋です。
そこに素直になれない性格が災いしたせいで、一緒にいるのは梨々くらいのものでした。
しかも今ので、きっとこの人にも嫌われただろう。
せっかく親切心から麻尋に話しかけてくれたのに。
こんな時にこんな性格の自分が麻尋は大嫌いでした。
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