ブブブブブブ…
「……あ、」
気付いた時には、麻尋はいつの間にか家に帰ってきていました。
そんな麻尋のポケットで携帯が震えます。
(…どうやって帰ってきたんだろ…記憶とんでる…)
メール?誰?
梨々かな…?
『桐谷んち、どこ?』
これだけなら、べつになんてことないメールです。
だけど、麻尋にとっては送信者がなんてことなくなかったのです。
(……しっ、城市くん!)
一瞬、心臓が止まってしまうかと思いました。
麻尋の受信ボックスは、父親か母親か梨々の名前しかありません。
なのに、そんな場所に好きな人の名前が並ぶのです。
(えっ、うそ…マジ!?とりあえず…返信!)
梨々への報告メール作成なんて後回しです。
麻尋は返信を連打しました。
(えっと……2丁目、だよ……返信!)
さっきまでの憂鬱や焦燥感はどこへやら。
今の麻尋は、満たされた気持ちでいっぱいでした。
(メールくれた、嬉しい……やっぱり、どう考えても好きだ、)
ばふん、と音を立てて麻尋の頭が枕に沈みました。
そうなのです。
今更、どんなに悩んでもやめられる恋ではないのです。
気持ちが大きくなりすぎて引き返せないところにいるのは、麻尋が1番理解していました。
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