あいつは…


「敦司」…といったっけ



女といちゃついていた。
敦司は女の肩を抱いて、いままさに持ち帰ろうといった勢いだ。


黒崎は冷めた目で見つめていた。



「おぉっ!!?」



目があった敦司が、
黒崎に気づいたようだ。



フラフラした足取りで、
黒崎に近づいてきた。



息が酒臭い…


黒崎は顔をしかめながら敦司を見た



「こんな時間になぁーにやってんですかぁ!?黒崎〈先生〉よぉ」



「あなたには、関係ないでしょう」



「黒崎、知り合い?」


後ろでヤスが訝しげに見ている。



「お前のせいで、かずいはおかしくなったぜ。

前はこんなとき、いつも一緒にいたんだからな…


お前のせいだよ。」



「今は他の方もいるし、いいんじゃないですか」


黒崎は、敦司の隣にいた女の方を見た。



道端でつまらなそうに煙草を吸っている。



「…お前にかずいは渡せねえぞ」



ーーー



「おい!やめろっ」



ヤスが叫んでいる。



…なんだ…



黒崎は自分の手元をみた。


血で、赤く染まっていた。


目前に、うずくまる敦司。


女があわてて駆け寄る。



「やばいよ、黒崎…」



ヤスが恐る恐る声をかける。



「…」



黒崎は冷たい目のまま、敦司を見ていた。


周囲の若者はかなり引いたところから様子をみている。



人を殴るなんて、久しくしていない。





しかし。



かずいのことを翻弄しておいて、



他の女に手を出して



それでもなお、


かずいのことを所有物のように言う男。




「僕は、あなたのように信念がなくて矛盾だらけの人が嫌いなんですよ、さようなら」



吐き捨てると、歩き出した。



ヤスが一歩後ろから無言で歩いてくる