遠ざかっていく葉瑠夏君の後ろ姿を、



いつまでも、見えなくなるまで見ていたあたし。



結局、葉瑠夏君が何のバイトしてんのか分からなかったな。



最後にさっき言っていた言葉。



『向陽を頼んだ』って何なのよ。

なんで、そんな事言うのかな…。

向陽君か………。

確かにあの日から連絡を取り合ってない。

やっぱり向陽君に……メールしたほうがいいのかな……。

嫌いなわけではないのに。
でも好きにはなれない。あたしの心の中にはもう葉瑠夏君が存在し始めているから。
でも……向陽と連絡をすれば、葉瑠夏君にまた会える口実にはなる。



向陽君との距離が縮まれば、それだけ葉瑠夏君にも近づける。



でもいいのかな……。



それでいいのかな……。
そんなのズルイよね。

だってそれは向陽君を利用することになるんだよね。



あたしは、じっと取り出した携帯を見つめ、握りながら考える。



どうしよう。



どうしよう。



さっきの葉瑠夏君の笑顔が頭の中で浮かんでは消え、



次の瞬間にその葉瑠夏君の笑顔は向陽君の笑顔に変わる。



こんなの……変だ。



マジでどうしよう。



こんなことで悩むなんてあたしらしくない。