ピアノ

さっきの私、まるで駄々をこねる子供みたいだった。

先生、すごく困った顔をしていた。

もうすっかり暗くなった廊下で、私は腕に顔を埋めて涙を耐える。

やだ、嫌われたかもしれない。


こういうときって、考えが悪い方にしかいかない。


本当に今、大野先生といるんじゃないのか、とか


真木先生も、私より大野先生といるほうが楽しいんじゃないのかとか


そうだよ、ピアノばっかり弾く私より、綺麗で大人な大野先生の方がいいのかもしれない。

それでも、私が先生と一緒にいるには、ピアノを弾くしかないのだ。

だって、真木先生と私は「教師と生徒」だから。


このまま考えても、憂鬱になるばっかりだ。


私はゆっくり立ち上がって、音楽室を後にした。

校舎の外は春なのに空気がはりつめていて、なんだか寒くて躰が震えた。