あたしは何が起こったのか全くわからなかった。







「美緩を絶対幸せにするから…


だから、美緩の人生…
俺にくれないかな……?」







あたしは少しだけ後悔した。

あの日、なぜ拓弥を振ったのか……。




今のあたしじゃ……この指輪は貰えないよ……






「左手出して」



気持ちとは反対に身体が勝手に動く。



拓弥があたしの左手の薬指に
綺麗なキラキラ輝く指輪をはめた。






「……綺麗だね……」

あたしの言葉に拓弥は満面の笑顔。




その笑顔を守りたかった。

あたしが大好きなのは……



その笑顔だから……





「…でも……ごめん……

あたし…貰えないよ……」







本当は欲しい。
だけど……あたしには遼がいるから…



指輪を外そうとする手を拓弥が止めた。



「……た…くや?」

「外さないで……
もう一回だけ…考え直して…?」




拓弥の目が訴えていた。

俺だけの美緩でいて、って……。





あたしは指輪を外そうとしていた手を引っ込めた。





拓弥があたしを抱き締めて、こう言った。




「俺だけを見ろよ……

俺は美緩しか見えねえんだ……」





拓弥の目は真剣で、真っ直ぐだった。



なんでそんなに優しいの…?



あたし……たくさん傷つけたんだよ?

それなのに……


いつもいつも
あたしだけを見ていてくれた……

見守ってくれていた……





「…ありがとう……拓弥」



あたしの口から零れた想い。



それは……
拓弥への感謝の気持ちだった。



観覧車のドアが開いて、係の人が顔を出す。


あたしと拓弥は離れる。



そして

「行くか★」


拓弥が右手を差し出す。
あたしはその手を握る。



あたしの薬指には指輪が光り輝いていた。