「美緩、そっち行っていい?」

向かい合わせに座っていた拓弥が突然そう言った。


あたしは硬直したまま、頭だけ頷いた。




拓弥が立ち上がる。
観覧車が揺れる。


怖い………怖いよ……


不気味に揺れる観覧車。
怖くて外の景色なんか見れるわけがない。


拓弥があたしの隣に座った。



「…美緩…顔色悪いけど大丈夫か?」



…拓弥のせいでしょっ!!


心の中で叫ぶ。




「……ごめんな?」





拓弥はあたしの顔を覗き込んでそう言うと、あたしを抱き締めた。




「え………ちょ、拓弥??」

「…黙ってて?」

「……意味分か……ん、」





拓弥に唇を塞がれた。



長く長く、甘い優しいキス………―






「美緩、外見て」


唇をあたしから離した拓弥はそう言う。




恐る恐る外を見てみると……



「…綺麗………」



とても澄んだオレンジの空にぽっかりと浮かぶ夕陽。


その景色はなんとも言えず、綺麗だった。




「…また来ような?」

拓弥の言葉にうん、と一言笑顔で返す。








そして…
拓弥の唇があたしの唇に重なった。



そのシルエットは夕陽がバックになっていて
とてもとても綺麗だった。





「……ん…」


観覧車の中にあたしの甘い声が響く。



それと同時に、あたしの唇を割って入ってくる舌。



極上に甘い甘いキス…―



一瞬だけ、あの頃に戻ったような気がした。






そっと唇を離す拓弥。





そしてどこからか、小さなケースのような物を取り出した。



「これ……美緩に」




そう言ってケースを開けた。


中に入っていたものは……


指輪。












「…俺と…結婚してください」