「拓弥、いってくるね^^」

「いってらっしゃい」




拓弥の唇があたしの唇に落とされた。

甘く、優しいキス。



そっと唇を離す。


「じゃな?」

拓弥の大きな手が頭を撫でる。



バイバイ、と言って手を振る。



拓弥も自分の靴箱へと向かっていった。



靴を置いて、歩き出す。






ガラララ…


ざわついていた教室が静まる。

クラスにはいくつかグループができていて、あたしが入れる余地はなかった。



黒板で席を確認して座る。



すると…
後ろから肩を叩かれた。

「…寺脇さん?」



振り返ると目がくりくりした女の子が立っていた。


「あたし…?」

「うん^^
私ね、白崎七海(しらさきななみ)って
いうんだ。


あの…友達になって……??」


女の子は小さな声で言った。



「うん、いいよ★
七海って呼ぶね?

あたしは寺脇美緩。美緩って呼んで」




新しい学校でできた最初の友達。


「私ね…
東京から来て、こっちじゃ誰も知ってる人がいなかったから…

美緩ちゃんと友達になれて嬉しいよ♪」



東京か…
だからキレイな標準語なんだ…

あの頃のあたしと同じ。




「ほんと??
あたしも嬉しいよ~^^

言葉、キレイだね?」

「えっ…あっ、ありがとう」



七海は顔を真っ赤にして言った。





「そういえば……
七海は気になる人できた??」


あたしが言うと、七海は俯いて真っ赤になった。




「……内緒だよ?
あの人が気になるんだ…」


七海の指差す方を見ると…


あたしは愕然とした。


その相手は遼だったから。




「そっか…頑張って★」

「うん!」




あたしの高校生活のスタートは、過去と未来と現在が混ざりあって始まった。