卒業生のいない体育館。
やけに静かな体育館。



だけど…雰囲気だけは、とてもよかった。


来賓の方が退場して、体育館に残されたのはあたしたち。






ポンと頭に何かが触れた。

横を見ると、梨杏が笑顔であたしの頭を撫でていた。


「泣くなっ^^♪」

「…無理でしょ~…」


鼻水でうまく息ができない。


声も変。




「卒業しちゃったね~…」

まだ卒業しちゃったんだっていう実感がわかない。



その前に、受け入れたくないんだ。



あなたがいなくなってしまったことを。

ずっと一緒にいてくれるって思ってた、
信じてた。


あたしが卒業するその日まで、ずっといてくれるって。


そんなわけにはいかなかったんだね…






体育館の片付けを終えて、在校生は教室に戻る。



手鏡で目を確認すると、見事にうさぎの目。



「真っ赤……」


やばい、腫れてるし。




「お、失恋したか?!笑」

隣の席の人がこづいてくる。

うるさいなぁ…




「あっは、ない^^笑」

「なんだよ…つまんねー」

「つまんなくて結構♪ちびちゃん^^」

「ちびじゃねーしっ」


あーあ、ガキ。笑



でも少し嬉しかった。

泣きすぎたあたしを笑わせようとする優しさが温かかった。

そうではなかったとしても嬉しかった。




「これから卒業生の見送りに行きますよ。
廊下に並びなさい」


担任が言う。

クラスのみんなは平然とした顔で廊下に並ぶ。

あたしは涙が止まらないってのに…笑




「みひろぉー´`泣かないのっ★

先輩の姿ちゃんと見送ってあげな??」



桜が言う。

そう言う桜の目が少し赤かったこと、あたし知ってるよ。




強がんないでいいのに…




みんなで廊下の端に移動して卒業生を待つ。




涙を拭って、笑顔で…