「佐藤!」

あたしは人混みの中をかき分け、声のするほうへと向かった。


「ごめん!遅刻した」


あたしは顔の前に手を合わして謝った。

「いいよ。じゃあ行こ」

和樹くんはいつものように無表情なまま歩き出した。


はぐれないようになのか、あたしの腕を掴んで。





「ちょっ、和樹くん」




和樹くんは少し微笑みながら



「………はぐれるから。それとも手ぇ繋ぐ?」

ってからかうように笑った。


あたしは少し赤くなって首を振った。