それを見た恋する不良は、くっと目付きを悪くし、こぶしを握って体の前に出した。



そして、ゆっくりと俺に近づいてくる。



まわりにいた奴らも、一斉に動きだした。



皆握った手をこちらに向けている。



だが俺は、まったく動じなかった。
むしろ、薄ら笑いがとまらない。



きっとラムのせぇだ。



「確かに、俺は妹であるラムを嫌っている。毎日毎日俺をこけにしやがって、本当に嫌いだ」



俺は左から殴りかかってきた奴のみぞにけりを入れ、続いてそいつの腹に右手拳を沈めた。



沈んだ右手をそのまま振り上げ、今度はななめ右前から飛びかかってきた奴のあごにこぶしをくらわせる。



「妹は嫌いだ。……だがな」



俺は恋する不良にねらいをさだめる。



「嫌いだからこそ、ほっとけねぇんだよ!!」



俺は自分の出せるかぎりの大声でそう叫んだ。



なぜ叫んだのかは自分でもわからない。



ただ一つ言えるのは、この時は勝とうと必死だったということだ。



そして、ゆっくりと時間は流れた。



殴り殴られ、ぼろぼろになりながらも、俺はラムのため(?)に戦い続けた。



どこが決闘だよ。
ただの喧嘩じゃねぇか。



ほつんと、そんなことを考える俺。



ほんと、俺はバカなんだな。



ラムのために、ほんと、バカだな。