「へっ?…噂?」
あたしは輝くんの部屋よりも、“噂”という単語が気になる。
うん、と頷きながら羽奈ちゃんは答えた。
「そうだよ?今、すごい広まってて5階に藤下くんの部屋を探しに来る人、増えてるんだって」
「やっ、そうじゃなくて…なんで輝くんの部屋がどうとかって噂されてるの?」
きょとんとした顔の羽奈ちゃん。
素で何言ってるか分からないあたしは、羽奈ちゃんが言っている言葉の意味も、その表情の意味もさっぱりで。
ソファーの上で、向かい合いながら羽奈ちゃんが口を開くのを待った。
「何いってんの、あんた。藤下くんのこと好きなんでしょ?」
「当たり前だよ!好きだよ!」
「それなのに、彼が噂になってること自体、知らないってこと?」
「し、知らないよーーー!!なんで噂になってんの?」
「なんでって、今年の新入生に凄いのがいるっ!って言われてるんだから!」
「凄いのがいる?それが……」
「そう!それが藤下くんなのっ!」
あたしの肩を両手で掴んで揺さぶる。
目が真ん丸に開いて、あたしに言葉の意味を伝えているのがわかった。
噂…
部屋…
凄いのがいる…
それが…
輝くん…
────…………………!?
「心結ってば、すごいのに惚れたね」
パチッとウインクをした羽奈ちゃんの顔から目線が離れなかった。

