“栞には、彼氏がいます”
放課後、寮まで一緒に帰る羽奈ちゃんにそう告げたあたし。
栞は琢也との面会でいないから、今日は羽奈ちゃんと2人きり。
「彼氏?」
「そうなの。栞ったら、あたしに教えてくれなかったんだよー」
「へぇ。でも栞って、もともと派手な顔つきだから、彼氏いるって考える方が普通じゃない?」
「でもあたし、初めて会ったときにいってほしかったなぁー」
「いや、それは早すぎでしょ」
やっぱり羽奈ちゃんも知らなかったらしい。
栞にあのあと、なんで琢也に執着したか聞いてみたんだ。
なんで彼氏いるのに、乙女チックになんかなってんのー?、って。
そしたら
「だって琢也くん、タイプだもん」
そのことを羽奈ちゃんに話したら
「ぶはは、栞らしいね」
って、良い意味なのー?悪い意味なのー?
頭を傾げるあたしに「友達感覚なんだって」と、肩を叩く羽奈ちゃん。
けど、彼氏いない暦15年のあたしには、まったく分かりませんよ。
「栞、乙女になってたもん」
「栞はもとから乙女なの」
「返信きたー!っておおはしゃぎしてたもん」
「新しい友達が増えたー!っていうことなの」
「メール打つの早かったもん」
「栞、メール早打ち大会で優勝したからね」
「嘘だあー」と笑いながら羽奈ちゃんの制服の裾を掴んだ、あたしの前にはいつの間にか寮がそびえ立っていた。
「心結、行くよ?」
あたしは羽奈ちゃんの後を追うように、中へと足を踏み入れた。

